2007年3月30日金曜日

冰魄寒光剣 (1)

 梁羽生の天山系列は、『白髪魔女伝』をその出発点として、延々と物語が語り継がれてゆきます。
『白髪魔女伝』、『塞外奇侠伝』、『七剣下剣山』については、中国で映画化されたこともあって、日本でもウェッブサイトなどで、あらすじもかなり紹介されています。そこで、ここではその後の『江湖三女侠』に続く『冰魄寒光剣』を紹介していきたいと思います。
 
 物語は、「天山七剣」のひとりであった桂仲明の二人目の息子であり、武当派北支の掌門である桂華生が武者修行のために、崑崙山脈をこえてチベットに向かうところからはじまる。
 「桂仲明の二番目の息子で、兄弟三人のなかで一番うでがたつ」という桂華生が、数年まえに天山派の唐暁瀾・馮瑛夫婦に敗れたことから(この経緯は『江湖三女侠』に詳しく語られてる)、そして彼の父が「天山七剣」の一人であり、天山派とはきわめて深い深淵があるにもかかわらず、その悔しさをおさえることができず、みずから一家を成さんと雄大な志を抱いて修行の旅にたったのだった。

 (注) ところで、この『冰魄寒光剣』は、『江湖三女侠』の続編であり、『江湖三女侠』で述べられたことを継承する記述も何カ所かあるのですが、桂華生に関して はまったくつじつまがあいません。『江湖三女侠』では、「桂仲明の三番目の息子であって、30歳前後」とあるのですが、それから数年の時が流れた『冰魄寒光剣』において、「桂仲明の二番目の息子で二十数歳」となってしまうのです。「オイオイ!梁羽生先生!」と言いたくなりますが、こういう不整合さには目をつむって、物語を楽しめればいいと割り切らなければ先にはすすめません。中国武侠小説を楽しむには、多少の不整合性は気にかけない大陸的おおらかさが必要なようです。