2009年10月10日土曜日

萍踪侠影録

 『萍踪侠影録』は日本語では「へいそうきょうえいろく」とでも読むのでしょうか。中国語では、「ピンゾンシャインルウ」(ping4zong1xia2ying3lu4)です。いきなり、なぜこんな話になったかというと、萍踪という漢字が日本語表記出来るかどうか疑問だったのですが、一応あったものですからやや驚きながら「へえー」と感心したわけです。中国語では萍踪は、「浮き草のように不安定で落ち着きがないこと」という意味だそうです。そして、「萍踪相逢」という言葉もあって、それは「知らない者どうしが偶然知り合う」という意味だそうです。こう見てくると、物語の輪郭がおぼろげながら浮かび上がってきます。
 この『萍踪侠影録』は、本の裏扉に「梁羽生大師的成名之作」と紹介されているように、梁羽生の名作の一つとして評価されているようで、その評価に恥じずとても面白かったです。物語のテンポもいいし、内容的にも武侠小説の真骨頂が十分発揮されていて読む人を放しません。また、この作品は中国で映画化もされているようです。
 梁羽生の作品のなかには、漢籍の含蓄が至る所にちりばめられているのですが、この作品も例外ではありません。蘇東坡の詩の「但願人長久 千里共嬋娟」の一節がここで引用されていて、 テレサテンが歌っている「但願人長久」の歌詞がじつは蘇東坡の「水調歌頭」であるというのも、この小説を読んで初めて知りました。
 余談になりますが、テレサテン(鄧麗君)などが歌っている「但願人長久」は YouTube で見ることができます。その一つを紹介しておきます。字幕は繁体字ですが、こちらからご覧ください。
 なお、この作品のあらすじは「Wikipedia」などでも紹介されていますので、そちらを参照してください。