2010年7月14日水曜日

慧剣心魔

 『龍鳳宝釵縁』は『慧剣心魔』へと語り継がれていきます。この題名は、「心の中にある魔の部分を慧の剣をもって断ち切る」といったような意味があって、仏教の経典からきているといったようなことを梁羽生はこの物語のなかで書いています。あまりうまく訳せないので、そういったことを作者が物語りのなかで語っているという、紹介だけに止めておきます。
 さて、物語は展元修と王燕羽夫婦が何者かに殺され、王燕羽は息をひきとる前に息子の展伯承に「仇は打ってはならない」と言い残すところから始まります。展伯承は母方の祖父の手下であった褚遂を頼るのですが、親たちが結びあわせようとしていた褚遂の娘・褚葆龄にはすでに意中の人がいたのでした。
 こうして、展伯承、褚葆龄、鉄摩勒の二人の子供である铁铮、铁凝さらには華宗岱の娘・華剣虹などが登場してきて、恋の芽生え、行き違いなどの若い男女間の愛憎がたっぷりと描かれるとともに、空空児、華宗岱、鉄摩勒、段克邪などの使い手の華麗なる闘いもビビッドに活写されていくのです。
 ところで、ここでは辺境の小国を侵略しようとしている「回纥」(Hui1he1 日本語では「かいこつ」)という国が登場してきます。「回纥」とは、辞書によると、「古代に北方に居住したトルコ系部族、現在のウイグル族の先祖」とあります。こうした歴史上の知らないことが出てきて、なるほどと思うのも武侠小説を読むもう一つの楽しみになってきました。
 なお、登場人物の名前で、日本語では表示できないものは、簡体字フォントを使っています。「铁」は「鉄」です。「褚」や「铮」は日本語では表示できないので、原文の簡体字のまま表示しました。