2009年6月9日火曜日

武当一剣

フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』によると、『武当一剣』は、清代に時代区分されていて、天山系列の最後の方に区分されていたので、天山系列の一部か続きかと思ってよんでみたら、まったく違っていました。まず、作品の時代背景は、明代です。また内容的にも、天山系列とはなんの関連もありません。作品にでてくる「武当派」自体も、『白髪魔女伝』からはじまった天山系列に登場してくる「武当派」とはまったく異なって、ここでは張豊三から始まる太極拳・太極剣の「武当派」になっています。この作品が発表されたのが1980年~83年ですから、「武当派」については金庸の作品に完全に影響されてしまっていると言えるでしょう。金庸の『神雕侠侶』や『倚天屠龍記』を読むと、張豊三の「武当派」についてはよくわかります。
 さて、内容ですが、陰謀渦巻く「武当派」への攻撃とそれに対する一種の謎解きという構図で、読者を引き込んでいこうという作者の意図は理解できるのですが、読み終わってみると、「竜頭蛇尾」というかまた男女のあいだの痴話騒ぎかといささか食傷気味の感が否めません。
 これが、梁羽生の最後の武侠小説だそうですが、ここまでくると「金庸にかなり引き離されたな」というのが正直な感想です。