2010年10月19日火曜日

龍虎闘京華 草莽龍蛇伝

 この二つの作品は、1954年に発表されたもので、梁羽生の一番最初の武侠小説です。小説は、二つの独立した作品になっていますが、内容的には一つの作品の前編、後編と見ることができるぐらいのもので、登場人物や時代的背景が共通です。
 この小説の時代は、清朝末期です。義和団とか太平天国の乱などがその背景にあるので、日本の江戸末期から明治時代といえるでしょう。果たして、この時代にこの小説に出てくるような武術の達人が実在していたのかどうかわかりませんが、闘いの構造は、主人公側=義和団対朝廷とその手先がベースになっています。ただ、義和団の中にも、いろいろな流れがあったようで、単純に清朝と対決する人民という構図ではないようです。
 登場してくる主要人物は、丁派太極拳・太極剣の使い手たちです。梁羽生の武術における表現は、金庸に比べるとかなり地味に見えますが、最初の作品ということもあって、「まあこんなものか」という程度に感じました。

 梁羽生全集はこれで全部です。全部を読み終わっての感想は、「梁羽生の作品は天山系列にかぎる」ということです。天山系列のなかでも、作品の面白さにはかなり波がありましたが、特に初期のものは読んでいてもとても面白かったです。