2009年9月12日土曜日

還剣奇情録

 梁羽生の「天山系列」を読み終わったので、時代を遡ってゆくことにしました。
『還剣奇情録』は、発表されたのが1959年ですから、比較的初期の武侠小説です。物語の時代は明代初期です。明の初代皇帝・洪武帝=朱元璋と戦ってやぶれた張士誠のかつての配下とその末裔たちが登場人物です。私は、このあたりの時代背景についてはまったく無知なので、最初はややとっつきにくかったのですが、最後のほうの謎解きがだんだん煮詰まってくるあたりから結構引き込まれました。

 天下に並び立っていたふたりの大侠、陳定方と牟独逸、その二人の一人娘を妻にし、一方からは宝剣を他方からは「達磨剣譜」を手に入れた雲舞陽。その雲舞陽の命を狙ってやってきた陳玄機は、だがしかし雲舞陽の一人娘雲素素と相思相愛のなかになってしまうのでした。しかしこの陳玄機こそ、雲舞陽が戦いのなかで、船から突き落とし宝剣を奪った最初の妻・陳雪梅の息子に他ならなかったのです。そして、愛し合う二人の異母兄弟の前には、前世の因果ともいえる悲劇しか存在しないのです。