2010年2月11日木曜日

狂侠天驕魔女

 『武林天驕』の続編ともいえるこの作品は、単行本で4冊、158万字にもおよぶ長さで、梁羽生の作品群のなかでも一二を争う長編です。
 このおどろおどろしい題名は、じつは登場する三人の主人公の「外号(wai4hao4)」(ニックネーム)を重ねただけのもので、それ自体はなにも意味がありません。つまり、狂侠・笑傲乾坤こと華谷涵、武林天驕こと檀羽沖、蓬莱魔女こと柳清瑶です。この三人の主人公を中心に男女間の微妙な恋心の変遷を横糸に、さらに金、南宋、遼、西夏、蒙古などを巡る戦いを縦糸に、そしてなによりも彼らの持つ「武功」を華麗なる紋様として物語は紡がれてゆくのです。
 ところで、この物語に出てくる武林天驕こと檀羽沖は、『武林天驕』のなかの檀羽沖とは生い立ちなど微妙に違っています。そうだったら、同じ名前でここに登場させない方がよかったのにと思えるほどです。でも、このいい加減さが梁羽生の作品のひとつの特徴でもあるわけで、おおらかな大陸的寛容さでもって、ヨシとしておきましょう。