2010年2月23日火曜日

飛鳳潜龍

 全集のなかで、89ページばかりのこの短編は、いままでの梁羽生の作品とはやや趣が違います。短編であるがゆえに、物語のテンポも速いし、誰が「奸細(スパイ)」かという謎解きもあって、中国語の多少難しい表現などは読み飛ばして、一気に読み終える楽しみがあります。
 登場人物は、御林軍統領の完顔長之(wan2yan2chang2zhi1) ぐらいが前作に引き続いて出てくるだけで、まったく前作とは関連がありません。
 金が宋から奪い取った武術の秘伝を取り返そうとする「潜龍」を名乗る正体不明の使い手、密かに金に潜入して妻にも自らの正体を隠してこの秘伝を盗みとろうとする蒙古のスパイ、そして彼らの過去には意外な結びつきがあって、最後まで目が離せません。
 長編ばかりが続いてきたこの時代をめぐる作品群のなかで、息の抜ける一作でした。